食べるもの、選ぶのは自分自身、 正しい知識で食を安全に楽しむ生活。

小国町の東側、豪雪地帯として知られる大石沢地区、そこに20数年前に東京から移り住んだのが、旬彩工房の代表を務める山口ひとみさんです。

旬彩工房では「いのちを育む食の応援団」として、無農薬で自分たちが育てた雑穀や減農薬のお米を販売しています。また、オリジナル商品の製造や販売も行なっています。

つながりが導いた場所「おぐに」 – 山口ひとみさん –

何を食べるのか選ぶことが大事

食へのこだわりを強く持っているひとみさん、その原点は東京での生活にありました。

東京での不規則な生活により、食生活がおろそかになり、アレルギーを発症。
そのことをきっかけに食べ物や環境に関わる勉強を始めます。

そこで、食べる人のことよりも、メーカーの利益が優先される日本の食産業の実態について知ることになります。

「「オーガニック野菜」や「自然食品」といった言葉を、各種メディアや売り場で見かけるようになり、日本の食環境も変わっていくかと思っていましたが、学び始めた30年前よりむしろ悪化し、日本は世界の中でも添加物や農薬、遺伝子組み換え食品が多く出回っている国のひとつになってしまいました。

さらに、この状況を知らない人が大半で、知らないうちに自分の望まない方向へ向かってしまう現状があります。」

 

この原因をひとみさんは現状を学ぶ機会が少ないことだと言います。

 

いつも食べている食品はどこでどのように作られて、何が入っていて、その成分は体にどんな影響を与えるか、知ることによって自分で選択ができるようになる。

身体は食べるもので形成されます。そのため、日々の食事から何を摂るのかがとても重要です。身体への負担が少ないものを選ぶことで、一生付き合う自身の身体を大切にしたい、ひとみさんからその思いを強く感じます。

 

「このような状況だから、私はきちんといのちを育む大地の恵みを生かした食べ物を提供したり、選びたいと思っています。まずは自分の周りの小さなことから。でも、そういう人が増えていくことで環境は変わっていくと思います。」

 

パン屋さんがなかった小国町

結婚をきっかけに東京から小国町へ移り住んだひとみさん、小国町にパン屋さんがないことを残念に思っていました。
そんな時にクッキーやパン作りが好きな生活クラブの組合員と出会います。
そこでその方にパンを作ってくれないかと持ちかけます。

その時期、たまたま県の助成金制度があり、6次産業化を進めていく動きがでてきたことにより、役場の担当者の方から、売れるように加工場を整えていくのはどうかという提案を受けたそうです。そこから着々と開業へ向かいます。

「きっかけはやはり『安心しておいしいものが食べたい』という思いから、その概念で繋がった仲間がいたから、旬彩工房は始まった」とひとみさんは語ります。

 

グリッシーニ誕生

パンやクッキーなど、一般的なおやつを作っていた旬彩工房でしたが、2016年にあるヒット商品が生まれます。その名も「つまむ穀つぶグリッシーニ」。国産小麦に自家栽培のたかきび粉や米粉を加えてできたスティックタイプのお菓子です。

※グリッシーニの製造は終了しております。(2024.4月現在)

 

 

それまで小国町にはお友達先に持っていく手土産のレパートリーが少なく、マンネリ化していました。そこでひとみさんは何か新しいものはないか、できれば自分達が食べて美味しいものがあるといいな、と考えていました。

その時期に参加したイタリア・ミラノ万博で、グリッシーニに出会います。イタリア発祥のグリッシーニはスティック状の細長いパンで、クラッカーのような食感が特徴です。

 

イタリアのレストランでは、卓上パンの1つとしてかごに盛って提供される。そのままで食べたり、生ハムなどを巻き付けて食べたり、サラダやスープなどの付け合せとしても食べられます。

自分たちで育てている雑穀・たかきびは、雪どけ水と澄んだ空気の中で栽培され、食物繊維が白米の20倍、ビタミンEは28倍、鉄は12倍と栄養価が大変高いのも特徴です。

このたかきびをグリッシーニに混ぜることにより、栄養価の高いおやつになったのはもちろん、相手の身体を気遣える手土産にもなりました。

 

栄養価が高く、化学的な添加物を使わないおぐにグリッシーニは、小さなお子さんやお年寄りの方も安心して食べられます。自家栽培の穀物を使って、健康にも気遣ったことが総合的に評価され、「第2回やまがた土産菓子コンテスト」で、山形県知事賞(最優秀賞)を受賞することができました。

 

このグリッシーニを皮切りに、つぶぽんやもぐまる等、雑穀を使った商品を展開していきます。雑穀を食べたくても、食べ方がわからない方が取り入れやすいような商品づくりを心がけて商品開発しています。

最近はコロナウイルスの影響による巣ごもり需要を受け、品切れ続出のパンケーキミックスを開発・販売

 

雑穀のある暮らしを提案するひとみさん。旬彩工房の看板商品の中には必ずといっていいほど、たかきびやもちきびをはじめとする雑穀を使っています。ひとみさんがここまで雑穀にこだわるのは、日本人の体を元気にする穀物だからだそうです。

 

「食には優先順位があって、主食がもちろん優先順位が一番高いですよね。今はパンや麺を主食として食べる人も多いですが、日本人はお米の栄養素を取り込むことが、一番元気でいられる、とDNAレベルで組み込まれています。そのお米をサポートする役割として、雑穀があります。だから、雑穀をできるだけ食べて欲しいと思っています。

そして、季節の調整をするのがお野菜。自然というものは面白くて、四季がある日本の中で、暑い夏は体温を下げるきゅうりやナス、寒い冬は体を温めてくれるにんじんやネギが旬になります。自然はその時期に必要なものを栄養価の高い状態で、一番美味しく、用意してくれるのです。

旬彩工房の商品でなくても、正しい知識で自分で選んだ食材を旬を楽しみながら食べてほしい」とひとみさんは言います。

 

大地とつながって生きる

「大地とつながって生きた方が楽しい」ひとみさんの食の価値観のひとつです。

「小国町で農業をやると、自然が一つの作業の目安になります。山桜が咲くと種まきの時期、藤の花が咲くと代掻きの時期、ウツギの花が咲くと田植えの時期、また、その作業と景色が一体化することで日々新たな感動を楽しめます。

この文化や景色は小国の人にとっては当たり前になってしまっていますが、普段自然に触れる機会が少ない人には新鮮な経験になるはず」とひとみさんは語ります。

別の場所から移り住んだひとみさんだから気がついた魅力。この魅力を小国の味と一緒に楽しんでもらおうと、旬彩工房で買い物をすると、小国の景色のお便りがついてくるなど、ひとみさんなりの+αの真心も一緒に届きます。

生産者と消費者はお互いが支え合っているもの、消費者がいなければ生産者も成り立ちません、ひとみさんはお客様に寄り添ったサービスを続けます。お客様が手を出しやすい価格設定、丁寧な梱包、楽しめる情報提供等、旬彩工房の目標はお客様の食料庫になること。まずは自分の周りから、着々とひとみさんの食のつながりは広がっていきます。

※焼き菓子の製造は終了しております。(2024.4月現在)

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取材:小国町地域おこし協力隊 西村 美祈